なぜ風景写真は絞るのか?

こんにちは、shuheiです。

絞ってますか?僕は相変わらず絞っています。
一眼カメラを購入したてのころって、背景がボケたいかにも一眼で撮影しましたって感じの写真に憧れてサボテン撮ったりするじゃないですか。でも、カメラ買いたての頃って望遠端で開放F5.6とかのキットレンズしか手元になくて、なんかあんまり絞りを調節することの効果がピンと来なかったりするんですよね。

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Sony α7 III, Sony FE 28-70mm F3.5-5.6 OSS, 1.80s, F5.6, ISO 6400

でも、だんだん撮影にも慣れてきて、旅行とかで絶景スポットとか行くと、なんとなく絞るのが正解みたいなワードを覚え始めていて、よくわからないまま適当に絞るんですよ。僕はそうでした。

じゃあ、なんで絞るんだっけとか、そういうところ、結構おざなりになってたりするので、そのあたりおさらいしておきましょう。

それでは本日もよろしくお願いします。

 

絞ると何が起きるのか

風景撮影は絞りましょう、というのはある種当たり前のように語られています。そのノウハウだけ伝承されていて、何の目的で絞るのか、その目的が失われがちです。なのでまず初めに絞ることで起きる変化を見てみましょう。

被写界深度が深くなる

被写界深度とはピントが合っている領域のことです。レンズはピントリングを回すことで、合焦する距離を調節します。3m先のテーブル上のリンゴにピント合わせるのか、その奥7m先のカーテンにピントを合わせるのか。焦点は距離によって合うようになります。
そして、F値が低いほど、焦点が合っている領域が狭くなり、F値が高いと焦点が合っている幅が広がります。

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開放付近では周辺減光が起き、解像が甘くなる

周辺減光とは、写真の四隅が少し暗くなる現象です。ビネットとも呼ばれます。これは絞りを開放にすると角の集光が中心部に比べてしにくくなるからで、中心部に比べて解像も甘くなり、パキッとした表現が鈍ります。

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まあこれは被写界深度が違うので、周辺減光しか表現できていませんが。

絞ると回折現象が起きる

これまで絞りを開放にすることで起きる現象に注目していましたが、絞ることで起きる現象もあります。それが回折という現象で、小絞りボケとも言われます。
絞ることで周辺まで解像するようになるのですが、一定以上絞ってしまうと逆に解像が甘くなってしまうことを言います。

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少し分かりにくいですが、「ぽ」の丸の部分、右のF16の画像の方が少しだけぼんやりしています。

絞りを調節することは被写界深度と解像のコントロール

これまで、絞りを調節したときの影響を見てきました。
風景写真では写真全体で稜線、木々の筋、雲の陰影など、パキっとした描写を求める傾向があります。つまり上であげた3つの現象は全てネガティブな要素として捉えられることが多いです。

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Nikon Z fc, NIKKOR Z DX 16-50mm f/3.5-6.3 VR, 1/500s, F10, ISO 100

そこで、適切に絞ってあげることで、被写界深度を深く全体でピントが合うようにする、周辺までしっかりと解像できるようにする、しかし小絞りボケを起こしたくない、というような調整を行います。

ではその適切な絞りとはいくつなのか?ということですが、それはレンズによるのでそれぞれのレンズで適切な絞りはどれくらいなのか?ということを把握する必要があります。
一番手っ取り早いのは、三脚に据えて、開放から一段ずつ絞って行って、見返して適切な絞りを覚えるということです。昼間の公園の樹木など、空間周波数の高い被写体を撮影して比較するのが一番ですが、そんな面倒なことしたくないよって方は、現場でF7.1〜F22まで絞りを一つずつ変えて撮影してあげることです。その中でベストな写真をセレクトすることでだんだんと適正な絞りが身についてくると思います。

それすら面倒臭い、という方は日光が当たる場所であれば大体F8〜F16の間で撮影してください。そんなに外さないと思います。
ただし星景写真などは話が別です。開放もしくは1/3段だけ絞る程度で十分かなと思います。というかそれ以上絞ってしまうと適正露出を得るのが難しくなってきます。

まとめ

絞ると、被写界深度が深くなり、周辺まで解像するようになる

絞りすぎると回折現象で解像が甘くなる

適切な絞りをレンズごとに覚える

これで、なんとなく絞っていた風景写真ですが、いろいろと工夫できるようになりました。いかに絞った方が解像がよくなると言っても、前景に花を入れて前ボケを狙いたいなら少し開放気味で撮る、などデメリットのある行動を調節しながら取れるようになっていきます。原理原則は大事ですが、最終的には自分で考えた構図、設定で撮影することがオリジナリティに繋がるので、ぜひ実践してみましょう。

今日はこの辺りで。