PBPを総評する技術(当日の振り返り)

こんにちは、shuheiです。

先日、4年に1度開催されるブルベの祭典、Pairs-Brest-Pairs Randonner2023に出走し、87時間43分で無事完走する事ができました。

この記事では事前にどんな戦略を立て、どんな装備で、どんな走行で完走する事ができたのか。また、事前の計画と実際の走行でどれくらいの差異があったか、何が良くて何が悪かったかなど、総評とともに振り返りをしたいと思います。

それでは本日もよろしくお願いします。

何故完走できたのか?

総評の前に、まず僕の出走時の情報をお伝えしておきます。

年齢: 38歳
性別:
身長/体重: 173cm / 62〜64kg
体脂肪率: 18〜20%

 

また、走力の参考にこちらも載せておきます。

ロードバイク歴: 約5年
2022年年間走行距離: 3,509km
19th Mt.富士ヒルクライム: 1時間50分27秒
2023BRM1211東京200弁天橋: 12時間27分
2023BRM311埼玉300常陸: 16時間6分
2023BRM318千葉400Go!白河: 25時間34分
2023BRM422埼玉600アタック二本松: 38時間34分

 

ご覧の通り、特別アスリート的な体型をしているわけではないですし、走力もブルベをコンスタントに出走している人たちからすると並かやや低いくらい。

ヒルクライムに至ってはかなり低く、富士ヒル年代別の偏差値は45でした。

 

ではこんな僕がなぜPBPという日本人完走率68.5%のブルベを完走できたのか?

それはもうハッキリと運が良かったからです

 

PBPの沙汰も運次第、と言ってしまうと元も子もないような感じがしますが運が味方についた時、その運を活かすにはそれ相応の準備が整っている必要があります。

チャンスは掴める者の元に訪れる」は座右の銘のひとつでもあります。

では、そんな僕がこの一年、どんな戦略で準備をしたのか、次に走る誰かの参考になれば幸いです。

PBPのルートと特徴

まずはPBPのルートのおさらいです。

往路605.6km、復路618.6km、合計1,224.2km、累積標高8,559m、制限時間90時間というルートです。公式では累積標高12,000mほどでしたが、RWGPSではエベレスティングに到達しないくらいの標高でした。

コースのほとんどが街と街を繋ぐ広い農道のような道で、信号はほぼありません。交差点はラウンドアバウトで越えていきます。

道は良いところと悪いところが7:3くらい、悪いと言っても日本の林道のような荒れた道ではなく、微振動がくる程度のもので、これが直接の原因で落車に繋がることはなさそうでした。

車通りはほとんどなく、数kmで1台抜いたりすれ違ったりするかなくらいの頻度。

 

そして最大の特徴は斜度0%の区間がほとんどなかったことです。だいたいが1〜3%の登りあるいは下り、ただ例外的に610km〜735km地点くらいまでは6〜9%の登り坂が多かったです。

 

PC事情も国内ブルベと異なり、コンビニのレシートを受け取ったり、指定のオブジェクトの写真を撮ってくるようなものではなく、学校などの施設を利用した大掛かりなコントロールでブルベカードに直接サインをもらう形式です。

ルート上にも24時間営業のコンビニはなく、コントロールのレストランか売店で補給をするようなことも多いのですが、何しろ参加者が6,000人を超える規模になるのでコントロールからレストランまで数百m歩いたり列に10〜20分ほど並んだりとコントロールでの滞在時間が非常に長くなります。かなり効率よくサインだけもらったとして20分は最低でもかかります。休憩も兼ねて立ち寄る為、そこまでキビキビした動きは難しいのでだいたい40〜60分の滞在時間になることがほとんどでした。

 

あと特徴的なことといえば、トレインやパックが非常に多いことです。

国内ブルベだと、参加者が多いブルベであればPC1までトレインになって進んで、それ以降はほとんど単独走か多くて3人程度で、トレインを組むことはあまりないかなと思いますが、PBPでは常にどこかしらにトレインが走っていました。

特にコントロールを出発した直後は多かったです。

僕は前述の通り、登坂力が圧倒的に低いのでアップダウンが多いPBPではうまくトレインに乗れる時間が少なかったのですが、数百km単位でトレインを組んでいた人とそうでない人とでは完走タイムに5〜10時間ほど開きがあった印象です。

 

それを踏まえて、今回僕の各コントロールの到着時間を見てみましょう。

途中危ない部分もありましたが、すべてのコントロールをクローズタイム前に到着できていました。

この辺り、事前の計画とどれくらい差があったのか見てみましょう。

各コントロールの到着時刻と事前計画

shuinout.hatenablog.jp

詳しい走行計画は準備編のこちらの記事で言及していますが、改めて。

 

まず目標としたのは以下の3点。

  • 全てのコントロールのクローズ時間を守る
  • 435km地点ルデアックを27時間以内に出発すること
  • 606km地点ブレストに40時間で到着すること

また先述のようにコントロールやウェルカムポイント(WP)は広いので滞在時間を45分で計算、コントロール間のグロス速度はその間の累計斜度を鑑みて、時間が経つにつれて速度が落ちる前提で設定し、以下のように走行計画を立てました。

実はギリギリまで往路復路共にルデアックを仮眠所に考えていましたが(走行計画記事も往路ルデアックを仮眠所としています)往路は直前でルデアックの次のWP、482km地点のサン=ニコラ=デュ=ペルムに変更しました。

ルデアックは事前に荷物を送っておけるドロップバッグがある拠点なので、ここを仮眠所にすると着替えや荷物の入れ替えなどもできて便利ではあるのですが往路では少し到着が早い時間であることと、翌日ルデアック-ブレスト-ルデアックをすると走行距離が350kmとなり最も過酷なブレスト離脱と共に無理が生じてしまうと考えました。

実際それは当たっていて、3日目サン=ニコラ=デュ=ペルムを2:30頃出発し、ルデアックに戻ってきたのが23:30。302kmを21時間もかかっているので300kmブルベの制限時間が20時間であることと比較するとどれだけこの区間が過酷だったかがわかります。

 

以上を踏まえて実際の走行記録がこちらです。

一部記録していなかったり、通過となった為厳密に到着時刻がわからなかった場所もありますが、主要なコントロールは全て記録に残していました。

ちなみに記録の残し方は到着した時と出発したときにiPhoneで写真を撮ることで時刻を記録していますが、到着時刻についてはセンサーの時刻を採用しています。

コントロールでのタイムマネジメント

この数値を振り返るとほとんどのコントロールで予定していた滞在時間をオーバーしていることがわかります。ルデアックに関しては30〜50分もオーバーしています。ひどい。

とにかくコントロールで時間を取られるのですが、逆にいえば走らずに休憩していられる時間があるということでもあります。

僕のブルベの走行スタイルとして、ダーッと行ってしまってPCで多めの休憩をとってまたダーッと行くのが性に合っているので、そういう意味ではPBPのコントロールとは相性が良かったのかもしれません。

 

しかしこれでもコントロール内でタイムマネジメントはしていて、リスタート時間の10分前にはアラームが鳴るようセットし、アラームが鳴ったらバイクに戻って出発準備をするようにしていました。なのでぼーっとしていたら出発が遅くなってしまったというようなことはほとんどありませんでした。唯一復路ルデアックだけは例外的にもたついてしまったのですが。

 

あとはコントロールの駐輪場は自転車が溢れているので、自分の自転車がどこに行ったかわからなくなってしまうんですね。特に仮眠後などは時間も経っているし寝起きで寝る直前のこと思い出せなかったりするし。

そういうリスクを回避するために念の為AirTagを購入し、フロントホイールに取り付けておきました。

Garminスピードメーターのようですが、こちらはレックマウントプラスAirTag1-R+という商品です。

国内でも盗難時の所在確認や、飛行機輪行の際のロスバゲ対策にもなるので、お守りがてらつけておいても損はなさそうだなと思いました。

水と食料の補給について

コントロールではお皿に盛って提供してくれるレストランと、出来合いのサンドイッチやパンを売ってくれるバーの2種類がありました。

コントロールや時間帯にもよりますが、レストランはいつも並んでいるバーはたまに並んでいることが多かったです。482km地点サン=ニコラ=デュ=ペルムで深夜2時頃はほとんど並ばずにすぐに食事が提供されました。

ですが、様々な方の走行記録を見ていると、やはりコントロールで食事を摂らないことが時短に繋がるようでした。そのためにもルート上のどこにどんなレストランがあるかは可能な限り出国前に把握しておく必要がありました。

僕も一応調べはしたのですが、Googleマップで調べた店舗が実際に開店しているかわからなかったり、走行中常にGoogleマップを開きながら走っているわけではないので、見落としが心配だったり、コントロール前にレストランを見つけてもタイムアウトが怖くて(クローズタイムまで数時間猶予があっても)先にコントロールに行ってしまったりなど、うまく街のレストランを利用できませんでした。

正直このあたり街のレストランを上手に使えていたのはルーキーよりもPBP経験者の方だったように感じます。

 

特に、コントロールの前にレストランを見つけたけど先にサインが欲しくて先行し、コントロールを出た後にレストランに寄りたいなと思っても見つけられず街を出る羽目になったことが何回かあったので、この辺りは本当に難しいなという印象。

もしかしたら国内ブルベのようにコントロールで補給するのではなく、補給する街とコントロールの街を明確に切り分けて計画を立てた方がいいかもしれません。実際そのような参加者は多かったように思います。

 

そんな感じなので、だいたいメインの補給がサンドウィッチジャンボンになってしまい、30cmくらいあるフランスパンとハム(たまに野菜が入っていて幸せだった)をひたすら走りながらかじっていました。

しかしだんだん走行と吸収を同時に行えなくなってしまい、食べると気持ち悪くなっていきました。どうも暑さで水を飲みながらパンを食べて走っていたことで胃酸が水で薄まってしまったことが原因だったようです。

ただ国内ブルベでも日常生活でもたぶん一度もお世話になったことがない水無で飲めるガスター10を飲むとかなり落ち着きました。Day2とDay4で1回ずつ飲んでいますが、飲んだ後翌日まで吸収のことを心配しなくて済みました。

ただやはり食後1時間くらいは負荷をかけずに走るとか、休憩を取るとかこれだけのロングライドをするのなら気をつけた方がいいなと思いました。

 

国内ブルベと違ってゼリー系の補給もほとんど入手できなかったことも辛かったです。

補給食はレストランでもバーでもなく、バイクメンテナンスエリアにパーツと共に並んでいました。SISなど有名な補給食もあったのですが、ゼリー系補給食はこういうのしか見ませんでした。

チョコのチューブを吸っているだけのような気持ちになる補給食。本当に補給できているのか謎でした。探せばもっとちゃんとしたものあったのかな。

ちなみになぜか味だけはめちゃくちゃ豊富で、10種類くらいあったので飽きることはありませんでした。

 

途中参加者の方と胃腸の不調について相談したら、その方は水を飲んだら味噌チューブを吸うようにして、胃の中が空っぽにならないような対策をしていたとのことでした。

PBPに関連してブルベのことはたくさん勉強して、たくさん知識武装したつもりでいましたが、まだまだ知らないことあるんだなあとしみじみ自分の過信を嘆きました。

睡眠について

先ほどの実走記録を見返します。

オレンジ色の帯が入っているところが大きな仮眠ポイントとして設定した場所です。

ただここ以外でも往路モルターニュ=オー=ペルシュ、往路カレでは10〜20分ほどレストランで仮眠をしましたし、道端で座り込んだり草むらで横になって同じく10〜20分ほど仮眠を取った回数は数え切れません。

このオレンジ帯の箇所で基本的に仮眠所を利用していて、復路モルターニュ=オー=ペルシュだけレストランで仮眠を取りました。

往路ヴィレンヌ=ラ=ジュエル: 50分
往路サン=ニコラ=デュ=ペルム: 3時間
復路ルデアック: 2時間30分
復路モルターニュ=オー=ペルシュ: 1時間

こうやってみるとDay5、そりゃ眠くて眠くて大変だったでしょうねという気持ちに。多少時間的マージンあったのだからちゃんと仮眠所を使えば良かったなと。

おかげで運命的な出会いがあったり嬉しい出来事があったりしたので結果的に良かったなと思いますけども。

shuinout.hatenablog.jp

中にはホテルを取ってシャワーも浴びて着替えもしてベッドでぐっすり眠った方もいたようなのですが、僕の場合だとそこまでリラックスしてしまうと翌日リスタートが切れないというか、ほどよい緊張感を睡眠時も保っていないと完走できないんじゃないかと思います。実際過去に400ブルベでホテル宿泊して闘志が削がれてDNFにつながってしまったことがありましたしね。

shuinout.hatenablog.jp

まとめ

初参加のルーキーとしてはそれなりの立ち振る舞いが出来たのではないかと思います。

何箇所か危ないところもあったし、想定外のこともあったけども、要所要所は予定通りこなせていたかと思います。

とにかく遠くを見ないこと、次の目的地を目標タイムで到着することだけを考えて走っていたのが僕の特性には合っていたのだと思います。

それをするために、国内で事前に走行計画も含めあらゆる想定と計画を立てておくことが完走につながったのかなと思います。

 

さて、次回はこの走行を可能にした国内における事前準備についてまとめてみます。

それでは今日はこの辺りで。