PBPを総評する技術(事前準備良かったコト)

こんにちは、shuheiです。

現在PBPが終わってから一か月が経とうとしていまして、時の流れの速さをしみじみと感じる毎日を過ごしております。

前回の当日の総評でも先述したように、さほど強くも才能もない僕が、どのようにしてPBPを完走することができたのか、今日はPBP出走を決意した日から当日までどう過ごしてきたか、振り返りたいと思います。

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それでは本日もよろしくお願いします。

僕のスペック

前回同様、基本的な体格や走力を事前にお伝えしておきます。

年齢: 38歳
性別:
身長/体重: 173cm / 62〜64kg
体脂肪率: 18〜20%

 

ロードバイク歴: 約5年
2022年年間走行距離: 3,509km
19th Mt.富士ヒルクライム: 1時間50分27秒
2023BRM1211東京200弁天橋: 12時間27分
2023BRM311埼玉300常陸: 16時間6分
2023BRM318千葉400Go!白河: 25時間34分
2023BRM422埼玉600アタック二本松: 38時間34分

ご覧のようにそんなに強くないです。

そんなわけで、2023年どのような準備をしたのか、今回は比較的うまくいったことを振り返っていきます。

徹底的な情報収集

これは誰もがある程度は行うことなのかもしれませんが、本当に徹底的に収集しました

PBPは現存するブルベの中で最も情報量が多く、攻略法から失敗談までたくさん見つかります。

またフィジカルギフテッドみたいな爆速ランドナーから、SR取得がやっとだったような人までさまざまな走力の視点での情報が手に入りました。

特に2015年のレポートと比較して2019年のレポートは情報量が圧倒的に増えていて、なんとなく2023年の日本人完走率はコンディション次第で大幅に上がるだろうなと予想していました。自分も完走率に貢献せねば。

 

PBPのことを調べるとまず目に入るのが、延々と続くアップダウンと寒暖差と補給の難しさについてです。また信号が少ないこと、トレインがたくさん走っていること、私設エイドがたくさんあること、ミスコースはしにくいことがわかります。

しかしそれらの度合いが分からず、結局どれくらいのタイム感で走ればいいのかが分かりませんでした。

 

そこで時間外完走やDNFした方の情報を収集し、徹底的に致命的なポイントを洗い出すことにし、それを潰すよう準備を進める作戦に出ました。

 

でも完走者も未完走者も、直接的な原因については記載があるのですが根本的な原因については記載がありませんでした。

直接的な原因は主に3点。

  • 眠気や疲労による遅れ
  • 体調不良に伴う補給ミス
  • 致命的なメカトラ

逆に純粋な走力不足であったり低体温症のような深刻な身体ダメージなどは事例としてあまり多くなかったことから、参加者のほとんどがあまりにひどい荒天でない限り10回走れば5回以上は完走できるようなブルベなのだと考えました。

徹底的な走行計画

上記の仮定を元に、いつも通り走行計画を立てました。

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詳しくはこちらの走行計画編をご覧いただければと思いますが、結果から言うとDay2までの計画はもう少し区間速度を上げて計算しても良かったかなと思います。

またコントロールの滞在時間を甘く見積もりすぎていました。基本的に45分をベースに考えていましたが、せめてドロップバッグがあるルデアックの滞在時間はもう30〜60分多めに見積もる必要がありました。

 

とはいえ計画を立てたこと自体はやっておかなければ完走は無理でした。

特にコントロールの出発予定時刻だけを目安に動くことができたので、ブルベ中に余計な計算はしなくて済みました。

そうすることで目の前のやらないといけないことだけに集中することができたのです。

 

ただ、走行計画だけでは意味がありません。計画した通りに走れなければ意味がないからです。

色んな400kmブルベ

立てた計画の通りに走れるようになる為、SRを取得してから400kmブルベの練習ばかりしていました。

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それは435kmルデアックに24時間以内で到着する為で、それの達成はPBP完走に必須ではないもののかなり大きなアドバンテージになるタイムだったのです。

 

初めて走ったBRM408千葉400白河のタイムが25時間38分だった為、まずは400kmを24時間切ること、そして最終的には21時間台でゴールすることを目標にしました。

結局BRM722埼玉400白河(どちらの400も白河で紛らわしい)で22時間29分だったのですが途中ミスコースを連発し、10kmほど多く走ってしまったり、コース確認のため立ち止まったりしてしまったので、走力やタイムマネジメントの上ではルデアック24時間達成が現実的になってきました。

 

ただ、ここまで来ても眠気との戦い方に課題を感じていました。

夜スタートブルベ

前述のBRM722埼玉400でも、眠気に勝てず意識が飛んで落車してしまい、走行には何の支障も出なかったものの足を負傷する事態となってしまいました。

過去のPBPでも眠気を原因とする落車によるDNFの事例はたくさんあったし、何より5日間という長丁場を適当な仮眠で誤魔化しながら走行するのは2日で終わる400kmや600kmならまだしも1,200kmでは不可能でした。

 

その為まずはPBPと同様に夜スタートの400ブルベを走り、眠気が来るタイミングや仮眠の取り方、効率のいい仮眠方法などを試行錯誤し、以下のことが分かりました。

  • 本格的に眠たくなってからでは遅い
  • 本格的に眠くなったら15分以上の良質な仮眠が要る
  • 地面に横になると体温が奪われてしまう
  • 人が近くにいるような時はアイマスクと耳栓が必須
  • カフェインを飲んでから仮眠すると寝起きが良くなる
  • 仮眠後は人と会話することで脳が活性化し眠気がおさまる

PBPではこれらを意識して仮眠を取るようにしてましたが、それでもうまく捌き切ることはできませんでした。もっと走力があれば、しっかりまとまった時間寝ることができるのですが……。

SR600 Fuji

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PBPを出走するまで3日以上のブルベを走ったことがなかった為、3日目の走行状態のデータを取る目的で7月の三連休でSR600 Fujiを走りました。しかし結果はこの記事の通り2日目でDNF、目的の3日目のデータは取れなかったので完全失敗なのですが、初めて体力を使い切ったと感じたライドでした。

その為PBP中、特に復路カレや復路モルターニュまでの激坂区間でも、体力の限界に達していないことを判断できました。

ある種のストレステストができたので、体力の限界が来たらこうなるぞ、という経験が直前にあったのは助かりました。

限界でないことが分かったとして坂が楽になるわけではないのですが、今の走りが間違ってないことが分かるだけで腐らないで済んだなと思っています。自分の限界を知るのって本当に大切です。

PBPを想定したシミュレーションライド

信号がなく、アップダウンが激しく、夜スタートで昼も夜も常に誰かと走れるPBPの環境を日本で再現するのは非常に難しいので、それぞれの特徴に近いルートを経験しようとなるべく毎週末走るようにしていました。

  • PBPのルートに似ていると言われた尾根幹
  • キツめのヒルクライムを含んだロングライド
  • 100km休憩なしで走るシミュレーション
  • 夜スタートのブルベの参加

いわゆるFTP向上を見込んだトレーニングではなく、グロス20km/hで走り続ける為にどこで頑張ってどこで手を抜くかみたいなバランス感覚を掴む為のトレーニングとして実施していました。

インターバルトレーニング

ヒルクライムが大の苦手なので、アップダウンが続くPBPでは心肺機能の向上が必須でした。

ただVo2MAXを向上させるというよりは高強度と低強度を繰り返しても、心拍数を安定させられるように慣れさせるという意味が強かったです。

結果的に平坦25km/hくらいで走行している僕でも登り1〜3%、500mくらいの登りを15km/h前後で登りつつ、降りを30〜35km/hで回して35km/h以上になったら足を止めるというような走り方でも息が上がらないようにコントロールして走ることができました。

防水防寒対策

結果的に今回のPBPでは不要でしたが、これは用意しておいて間違いありませんでした。

  • ゴアテックスのレインウェア上下
  • 裏起毛の防水グローブ
  • 靴用ビニール袋
  • ハーフシューズカバー
  • メリノウールインナー
  • ネックウォーマー
  • エストウォーマー
  • 裏起毛サイクルウェア上下

ただ意外だったのは真冬用のフリースビブタイツよりも、夏用のビブショーツの下に裏起毛のロングタイツを履いた方が暖かかったこと。フリースビブタイツ引退かも……。

アルコールカフェイン断ち

運動能力や睡眠の質の低下に繋がるアルコールを8/5を最後に断ちました。またカフェインについては7/22の400kmブルベを最後に断っています。

これはカフェインもアルコール同様、質の高い睡眠の妨げになることと、ブルベ中の眠気対策としてのコーヒー摂取の効果を最大限高める為です。

効果は絶大で、ここぞという時にコーヒーを飲んで仮眠した後はそれなりに覚醒することができました。ただ問題はPBP中、そんなに都合よくホットコーヒーが手に入らないことでしたが。

常備薬

普段からブルベに限らずエマージェンシーセットを常備しています。中には絆創膏、ダクトテープ、タイラップ、ロキソニンが入っていますが、今回薬剤師の方に相談をして、ロキソニンSガスター10を常備薬として持つことにしました。

ブルベ中の体の不具合のうち、投薬で対処しやすいのは身体の痛みと胃腸の不調です。

僕は腸はそんなに強くないですが胃はそれなり強く、胃薬を飲んだことはなかったのですが、今回初めて飲んだほど不具合に悩まされました。薬はそこまで嵩張らないので、思いついたものは持っていって良いと思います。使う機会はありませんでしたが正露丸もあれば腹痛対策になったかもと思いました。

日焼け止め

毎朝日焼け止めは塗り直していました。日焼けは軽度の火傷なので、放っておくとそちらの回復に体力が使われてしまい走行に影響が出ます。

ちなみに僕は夏でも長袖ロングビブで首から下は完全ガード。顔も普段はフェイスカバーアイウェアUVカットしていますが、このフェイスカバーは眠気と戦うことになるブルベだと、酸素が不足して眠気が促進するので使えません(あと7〜8%超えるような峠も流石に呼吸が苦しくなる為使えません)。

その為、PBP中はWAKO'Sの日焼け止めを使っていました。この日焼け止め、一般に2〜3時間ごとの塗り直しが不要なのでとても重宝しています。落とすのに専用のクレンジングが必要なのですが、PBP中は流石に使うことできませんでしたので朝に塗り直しで対応します。

AudaxJapan公式PBP記念ジャージ

www.onyone.co.jp

オンヨネ製のPBPジャージを着て走っていると、描かれた日の丸で日本人であることが周りのライダーにも伝わるので、他の日本人ランドナーから声を掛けてもらえました

朝方、最高に眠い時、何度も声をかけていただいたおかげで完走できたと言っても過言ではありません。オンヨネのビブのパッドもさすがPBP記念ジャージというだけあってロングライド向きのフッカフカパッドが付いていました。オススメです。

直前のバイクメンテナンス

PBP出場を決意してから、普段お世話になっているショップにも意向を伝え、さまざまなサポートをしていただきました。走行中も不定期ながら近況を連絡すると、対策やアドバイスなど、激励の言葉で勇気づけてくださいました。

そんなショップに出国直前でメンテナンスをお願いし、最終点検をしてもらいました。

事前に自分でタイヤとチューブを交換しておいたのですが、こちらもパンク対策として有効かなと思います。

おかげでメカトラに悩まされることなく、ノートラブルで完走できました。

常に笑顔を

そして案外大事なこと。どちらかと言うと準備ではなく走行時のことですが、常に笑顔でいることを心掛けました。

特に辛い時こそ笑顔。

もちろんメンタル的なこともあるのですが、笑顔で口角が上がることによって酸素の取り込み量が上がるんですよね。

キツいからと下を向いたり息を切らしてしまうと吸い込む酸素が減ってしまい、体内に酸素が回らなくなり、身体が仕事しなくなってしまいます。

また新鮮な酸素をたくさん吸い込むには肺の中がなるべく空っぽになっていないといけませんが息が上がると呼吸が浅くなりがちで吐き出せなかった二酸化炭素が邪魔をして酸素の取り込み量が減ってしまい、やはり身体中が酸素不足に陥ります。

笑顔で深く力を抜いて呼吸をすることで酸素がたくさん取り込まれます。当然メンタル的にポジティブになることで運動パフォーマンスも向上します。

ちなみにもっと酸素が必要な時は眉を上げてください。鼻腔が広がりさらに呼吸の効率が上がります。

事前準備を完璧にすること

ブルベはトラブルを楽しむもの。臨機応変に対応し、完走を目指すことこそがランドナーとしての本当の強さの証明でもあると思います。

ただ今回僕は何が何でも完走を全てに優先しました。

面白くないことかもしれませんが、完走をする為に国内でできることは完璧に済ませて、当日は計画通りにものごとをこなすだけの状態にしました。

決まったことを決まった通りに、目の前の課題に集中し取り組む、そしてそれができる環境を整えることがPBPに限らずあらゆる目標達成のアプローチ法として有効な手段だと思います。

 

次回はそんな完璧と思えた計画ですが、裏目に出てしまったこと、やれば良かったこと、間違えてしまったことなど、改善が必要な事をまとめます。

 

それでは今日はこのあたりで。