PBPを完走する技術(Day4 Loudéac〜Mortagne-au-Perche編)

こんにちは、shuheiです。

PBPも4日目となり、かなり大詰めとなりました。

それでは本日もよろしくお願いします。

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50分の出遅れ、クローズタイムの危機

8/23 2時に起床。

ルデアックの仮眠所はあまり環境が良くないと聞いていましたがなるほど確かに。いびきなどの騒音については耳栓で対応し、寒さについてはドロップバッグに仕込んだシュラフを利用しました。

コットを案内されたので本来ならエアマットを敷くべきだったのですがエアマットを膨らませるのも5分ほどかかるし起きた後仕舞うのも面倒なのでやはり使いませんでした。

シュラフはコンフォート5度のモンベルダウンハガー800#3でちょうど良かった。起きてシュラフから出た時になるほど確かに寒いと感じました。

ドロップバッグがこれでパンパンになってましたが正解でしたね、ルデアックでもぐっすり眠れました2時間半くらいだけど。

 

食事を摂ってドロップバッグを入れ替えて着替えをして出発をします。

 

当初の予定ではもっと冷え込むことを想定していて、4月末に参加したBRM422埼玉600アタック二本松の気温を想定した装備でいました。

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ですが、予想外に気温が高く、夜間や早朝も通常装備で問題なく走行できそうだった為、ここで装備を一新しました。

  • モンベルスーパーメリノウールEXP. → ファイントラックドライレイヤーウォーム
  • モンベルスーパーメリノウールウエストウォーマー(ドロップ!)
  • ネックウォーマー(ドロップ!)
  • パールイズミシューズカバー(ドロップ!)
  • フリース(ドロップ!)

最終日0時ごろから、ランブイエでは雷雨の予報が出ていたため、雨天装備はそのままにしました。

  • The North Face クライムライトジャケット
  • The North Face マウンテンレインパンツ
  • テムレス 02ウインター
  • ビニールシューズカバー

そんなこんなをしていたらリスタートが50分も遅れてしまい、3:22出走となってしまいました。

ルデアックのリスタート予定は2:34、この時間までにリスタートしないと次のクローズ時間に間に合わないかもしれない限界出走時刻が3:02と、多めに見ても20分の借金

これに気づいたのはリスタートをしてから10kmほど進んでからでした。疲労恐るべし。

 

次の目的地はWPであるケディヤックが60km先、コントロールタンテニアックがさらに25km先です。この距離を3日目の体力で20分縮めるのは相当頑張らないといけない。その上時々やってくる睡魔のため5〜10分道端で眠るなんてことをしていてはそうとう厳しい。タンテニアックのクローズ時間は8:45と5時間ほどしかない状況でした。

普段なら85km5時間なんて一度休憩とろうかくらいの猶予があるレベルですが、すでに未踏の800kmを走破している状態です。いつも通りに進めるかどうかは全くわかりませんでした。

 

PBP2023、出走して以来最大のピンチが待っていました。

 

焦りはトラブルを生み、トラブルは遅れを生みます。前回の記事でも言ったように走行中のランドナーができることはペダルを回すことしかできません。

 

暗闇を走りながらこの睡魔をどうしたらいいか、クローズタイムまで間に合うかどうか、色んな事をぐるぐると考えながらそれでも眠い!とどうしようもない状況の中、隣から日本人の参加者の方に声を掛けてもらいました。

日本ジャージを着ていたから日本人だと思ったとのこと。AJ公式のPBPジャージ着ていて良かった!

ここで九死に一生を得てなんとか持ち堪えました。

薄らと明るくなってきた中、WPのケディヤックに到着。声を掛けてくださった方はここにご友人がいらっしゃるとのことで離脱。

ここがコントロールでない事を確認して、僕は復路ケディヤックをスルーし、ここでの所要時間30分の予定を飛ばしてタンテニアックまで走りました。

この時点で眠気はなくなっていて単独走となっていましたが残り25km。なんとか当初の目標時刻までに到着できそうな見込みでした。

Tinténiac 867km 8/23 7:41

だいぶ明るくなってきたところでタンテニアックに到着。蓋を開けてみれば30分ほど貯金を作れていました。これは俺の走力すげーではなくて、いかに当初の予定がザルだったかということ。あと一緒に走ってくれた方に本当に感謝です。あの奇跡がなければ今こうして記事を書くことができていなかったかもしれません。

 

最大のピンチを切り抜け、コース的にも比較的下り基調になったおかげで、かなり気持ち的にゆとりができました。

次のコントロールは60km先のフジェールですが、途中休憩を挟んだりやりたい放題です。

往路で印象的だった教会を撮りました。フランスの田舎町は教会が非常に大きく目立つので町に入るのが楽しみでもありました。

こんな感じのところでコーラ休憩。

フランスではコカというと伝わります。

Fougères 927km 8/23 11:54

ルデアック以降、久しぶりの登り区間でしたが、予定より1時間ほど早くフジェールに到着。

カフェで軽く食事をして早めにリスタートを切りました。それでも30分掛かるのだから、やはりPBPのコントロールは時間を取られるという事前情報はその通りでした。

 

タンテニアックからモルターニュまでの区間はほぼ往路と復路が同じ道なので、たまに「あ、ここ往路で通ったな」と思い出すことがあったのですが、ほとんど忘れていました。それがある意味でフレッシュな気持ちで走ることができたのかなと思っています。

 

この区間は割と日本人の参加者の方と話しながら進むこともでき、なかなかメンタル的にも進みやすい区間でした。

本当に話しながら走れるのは幸せなことで、参加者400人弱といえど、それでも道中お会いできるのは20人程度かなというところ。さらに同じくらいのペースで走ってくれて会話もしてくれるような方、なかなかいないんですよね。

ただ4日目になるとみんな疲れてくるのか、ゴールもある程度見えてくるからか、逆にゆとりが出て来てる印象でした。この時点で残り300kmを切っているわけで、300kmだと早ければ15時間以内、遅くともここから20時間以内走り切れるイメージが湧いてくるのでしょう。

 

なんてことを考えていたら、ゴールの制限時間や残りの距離がチラついてしまい、逆に不安になってしまったので、僕は変わらず次の目的地のことだけを考えながら走るようにしました。とにかくこの走法が一番メンタルを守ることができました。

 

次のコントロールが90km先のヴィレンヌ=ラ=ジュエルまで距離があった為、途中Gorron(ゴロン)という町の私設エイドで補給。

久しぶりの大規模エイドで、これはPBP公式エイドなのか見間違うほどでした。本当にどういう運営体制なんだろう。本当に助かります。

サンドイッチを2つ購入。一つはラップでぐるぐるまきにしてもらってジャージのバックポケットにしまって後で食べます。

真ん中のはライスプディングというもので、おかゆ的なものかなと思っていたら本当にプリンの味をしたお米のスイーツでした。すごい美味しい。日本でも食べたいなと思ったフランス菓子です。

時刻は17時を回って、ちょうど1000km、70時間で走破のタイミングを写真に撮れました。これでRM1000も走れることがわかりました。

ただ元気かというとそうでもなくて、このタイミングで2度目の胃薬を飲みました。さっきのサンドイッチの消化が間に合わず少し気分が悪くなっていたのです。今まで飲んだこともない胃薬でしたが持って来て助かりました。

Villaines-la-Juhel 1017km 8/23 18:25

往路は深夜に到着したこともありランドナーばかりでしたが、復路ヴィレンヌは盛大な応援を受けて到着しました。

この雰囲気、出国前の勉強会でPBPに出場したみんなが勇者になるとお聞きしたことを思い出しました。まだゴールまで200kmもあるのに感動してしまってちょっと泣きそうになりました。

4日目の目的地モルターニュまで残り80kmほど、最後の食事をして向かいます。

どういうわけか、子供が案内してくれて、トレーを持ってくれて、アレが食べたいコレが欲しいと指をさすと取って、会計をした後も食事会場まで運んでくれるホスピタリティぶり。なんだか申し訳なく思ってしまいました。そういえば往路でも子供が仮眠所まで連れて行ってくれて、時間になったら起こしてくれてましたね。

 

PBPも残り200kmとなり、このヴィレンヌ〜モルターニュの区間、久しぶりにきつめの上り坂の区間となります。

思えば往路はルデアックチームの超高速パックに引っ張ってもらってめちゃくちゃなタイムでヴィレンヌまで到着したのですが、それは下り基調ということもあったのでしょう。

途中Alençon(アランソン)という移民の多い町でケバブを食べながら、外国のランドナーとインスタのアカウントを交換したり、日本のランドナーとお話させてもらいました。

胃腸対策のために味噌チューブを持っているという話を伺い、なるほどと。

胃の中を常に空にしないように、胃液が薄まらないようにという対策のようでした。

あと30時間ほど早くその情報にアクセスできていれば……。

厳冬期登山でも練乳のチューブを持っていくという話は聞いたことあったのですが、それは氷点下でも凍らず、グローブをつけたままでも手軽にカロリーが摂取できる補給食として利用されているもので、今回は補給に関してはコントロールもあるし街のレストランもあるしとたかを括っていたのでした。

次暑くて水を飲みながら進むような時は味噌チューブ的なものを用意しよう。どんなに対策をしていてもまだまだやれることあるもんですね。

 

今回PBP中初めてコントロール以外のレストランに立ち寄ったんですけども、もっとこういう時間が増えたらいいなと思いました。

 

ケバブ屋で30分ほど休憩をして残り45km、モルターニュを目指します。

ここが最後の激坂区間、特にモルターニュに入る直前は本当にきつくて長い坂が待っていました。

PBPをこれだけ走っていると、「次のコントロールまでの距離が10km程度、ってことこの坂を登ると街がひとつあって、もう一度降って登り返した先がコントロールの街だな」みたいなことが予期できるようになってきます。ただ絶妙なのは残り7kmくらいで上り坂になっていると、結構読めなくて、軽いダウンを挟みながら順調にグイグイ7km全部登ってコントロールということもありました。ちょうどモルターニュがそういうコントロールでした。

確かに往路ではモルターニュを出てから長い下り坂がありましたが、そうかそれを上り返させられてるんですね。

そして坂を上り切ってカーブを曲がった先に10%を越えるラストスパートが……。ほんの100m程度だったと思いますが、ここまで感謝しかしていなかったPBP運営に対して初めて呪詛の言葉を吐きそうになりました。

Mortagne-au-Perche 1102km 8/24 0:29

なんとか日付が変わる前に到着したかったのですが、30分も日を跨いでしまいました。

それでも予定より30分も早く到着しているので良しとします。

往路でも軽く10分ほど仮眠をしてレストランも暖かかったことを確認しているので、仮眠所には行かずレストランでシュラフカバーとアイマスクと耳栓で仮眠をすることに。

iPhoneのタイマーは2時に起きれるようにセット。翌日雨の予報だったので、雨装備を準備して起きたら着るだけでいいようにしました。このあたりは今朝のルデアックでの失敗を元に先に準備をしています。

 

この4日間ではじめて仮眠所を使わずに寝ましたが、当然のことながらやはり若干寝づらいです。ドロップバッグに入れたエアマットは膨らます時間がもったいなくて結局使わずじまいでしたが、ここで使えたらよかったなとか思っていたらいつの間にか意識がなくなっていました。

 

ふと気になってアイマスクを外しあたりを見回しました。

さっきと少し様子が違うみたい。ドルーに向けて出走した人が何人かいたようでした。

今何時だろう?ジャージのバックポケットに手を伸ばしiPhoneを見ると目覚ましのためのタイマーが止まっていました

 

それでは今日はこんなところで。